
続・続・続・下呂
なかなか薫るのが叶わない上品な湿気のニホイ・・・
苔生した土の上に落ち葉が積もり極彩色に彩られた地面がある。
まるで昔観た映画ソウルメイトの世界のようだと思いながらその上を
鼻緒に引っ掛けた親指と人差し指の付け根を振り子の軸にしてぺったんぺったん下駄と足裏を合わせて音を立てながら歩く104氏。
『大きなお庭やわいねぇ』

そう呟きながら深呼吸をしてみた。

そして、息を大きく吸い込んだついでに
『マスター何処やわいねー?』
そう叫んでみた。
水分を多く含んだ空気の中でその振動は早くに消えてしまった。
『うぅむ、お庭が広すぎてマスターを見つけられんやも知れんね』
独りなんだかそう納得して苔道を踏んで散策を続ける。
ほとほと歩き回ったので、咽喉も乾いてきた。
どれ程歩いたのだろう・・・。
ふと気がつくと104氏が踏締めているのは苔生した土から細かな石敷きの土に変わろうとしていた。

そこで視線を上げるとその少し先には東屋らしきものが見え、その傍らに鹿威しが設えてあるように見える。
そう言えば先ほどから鹿威しの音が聞こえていたようにも思われる。
104氏はそこでうん、と伸びをして東屋の方へ駆けて行った。
苔生した場所は樹木が高く生い茂り少し先の視界もままならなかった。
しかし、石敷きへの境界を越えるとそこからは視界が拓け一味異なる情緒を感じさせる庭造りとなっていた。
『ふぃ、疲れたやわいね』
東屋だと思っていた建物の前に辿り着いた104氏はそう言いながら鹿威しを覗き込んでいる。
世間一般ではこの建物を茶室小屋ということを104氏が知ることになるのはこれからほんの少し後のことである。
